BOARD(from LONDON)Live@TOKYO

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、ツアーやフェスの中止、アルバムや楽曲リリースの延期などが相次ぐ事態が続いている2020年も間も無く終わりを迎えようとしている。

 

誰もが2020年以前の「日常」を待ち望んでいるだろう。しかしまだまだこの厳しい世界で私達はウイルスとの共存をしていかないといけないようだ。

 

そんな中、幸運にもロンドンを拠点に活動するポストパンクバンドBOARDの日本初公演を見ることができた。彼らはShame HMLTD Sorryなども活動していたロンドンにあるウインドミルでの演奏経験もある実力派。サウスロンドンで「ここから何か始まりそうな予感」そんな空気を現地で肌で感じてきているバンドだ。

 

会場となった下北沢THREEは通常のキャパシティ約170人ということだがウイルスの拡大防止策として観客を40人に絞っての開催となったがチケットは見事にソールドアウト。

 

この日は東京を拠点に活動する以下のバンドの出演もあった。

Psychoheads

STRAM

Sugar House

kiwi

 

 実力派が揃う中、日本初公演であるBOARDがライブのトリとして登場したのだ。

 

21:56 機材のセッティングが完了し、まずはドラムのカジが登場しリズミカルなプレイで演奏がスタートする。既に発表されているIf I Forget Youでの幕開けとなった。小気味よく低音を鳴り響かせているドラムに合わせベースのジョーが登場、このあたりから会場の雰囲気に変化があるのを感じた。鳴り響くリズム隊に遅れボーカルのムラが登場したかと思いきやステージを降り観客の中に消えていく。ライブといえば、どんなジャンル、スタイルであれ歓喜、祝祭の場であった。多幸感に満ち溢れたエネルギーが爆発し、その場でしか味わえないカルタシスが得られるからこそ人々は音楽を愛し、集まるのだ。

youtu.be

 

しかしBOARDの3人がステージに揃った瞬間、場の性質が変わった。この日の3人の姿はまったく嘘飾のない生身の姿と音であり、貴重なドキュメントであった。

 

ボーカルがステージに戻るとリズムを刻んでいた2人に加わりついに演奏が始まる。

 

フィットしすぎないスラックスにドレスシャツを身に纏う姿はイアンカーティスを思い出さずにはいられない。BOARDのメンバーがいかにUKのカルチャーを愛し向き合っているかが佇まいからも伝わってくる。力強く歌い上げられる愛についての葛藤、自身の恋愛に対する精神価値について表現したこの歌はリズム隊と切れ味の良いギターサウンドが合わさり観客の体を揺さぶっていく。BOARDの魅力は美しい日本語の歌詞にもある。ボーカルのムラが愛について迫った楽曲は間違いなく彼らにとっても観客にとっても名曲であることを確信させる時間となった。

 

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If I Forget Youに続き同じタイミングでリリースされたVerifyが演奏される。演奏時間が30分に設定されていたが頭の2曲で既にリリースされている楽曲をやりきる姿には感服した。テンポよく演奏されるVerifyにこの楽曲の演奏を楽しみにしていたファン達が前列で大きく体を動かしているのが印象的だった。ボーカルのムラは音源よりも圧倒的に生の歌声の方が魅力があり観客にもそれが間違いなく伝わっている瞬間であった。不満分子、ひねくれた将来、この国の若者の決めつけられたような未来地図に向かって「クソッタレが、テメエの敷いたレールになんか乗らねえよ」と反発し現在と未来の自分達にスポットライトを当てるこの曲はバンドにとって強いパンク行為であり観客にとっても最高のアンセムであった。

youtu.be

 

ここから合わせて4曲未発表の曲が演奏されたのだがどの楽曲もさすがはロンドンを拠点に置いている彼ららしく。最先端をいくポストパンクの空気を纏い彼ららしい詩の世界を巻き込んだ楽曲で構成されていた。リリースされていない楽曲ばかりにも関わらず最後に観客のボルテージが最高潮になっていたのは彼らに確かな実力があるからだろう。

 

2010年代後半のギターミュージックが不振に落ちいる世界の中に飛び込んでいった彼らは確実な考察力と稀に見るカリスマ性、センスで世界を舞台に様々な相手に向かって砕け、立ち向かい日本を代表するバンドとして輝いていくだろう。彼らは年明けに新たな楽曲をリリース予定とのこと。タイミングを迎えれば彼らはすぐ本拠地であるロンドンに戻っていくはずだ。彼らが日本にいる間に機会があれば是非ライブに足を運んでみて欲しい。ここ2年間世界中を席巻しているFountaines D.Cのようなバンドが日本から現れる瞬間が2020年代にはあるのだ。

 

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If I Forget You

If I Forget You

  • BOARD
  • ロック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

 

Verify

Verify

  • BOARD
  • ロック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

https://instagram.com/boardtrio?igshid=1pmfcfmanqi80